全国学力調査結果を学校予算や教員賃金へ反映することをやめ、教育条件整備を求める緊急要請

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大阪市長 吉村洋文 様
大阪市教育長 山本晋次 様

全国学力調査結果を学校予算や教員賃金へ反映することをやめ、教育条件整備を求める緊急要請

 日頃より大阪市の教育活動の充実へご尽力いただきありがとうございます。

 さて、吉村市長は8月2日の会見において、「『全国学力・学習状況調査(以下、全国学テ)』に具体的な数値目標を設定し、その結果の達成状況に応じて校長、教員のボーナス(勤勉手当)や学校に配分する予算額に反映させる制度の導入を目指す考え」を示しました。

 これは全国学テの結果を用いた教育行政による違法な学校教育への介入です。この制度を導入すれば、子どもと教職員・学校は、全国学テによる競争を強いられ、管理と統制がいっそうすすみます。それでは学力が向上するどころか、不登校や校内暴力行為の増加など、学校の「荒れ」の深刻化につながります。そして、学力の一側面でしかない全国学テの達成状況のみが目標とされ、子どもたちの豊かな発達に悪影響を及ぼします。

 文科省による結果分析では、「子どもの学力が高い」のは「親の年収や学歴が高いほど」であり、「幼少期に本の読み聞かせをしてもらった子」とされています。時間はかかりますが、市民の経済・生活を底上げし、保護者が子育てにもっと力を注げるようにすることこそ大切であり、それこそ行政の仕事です。また、「好成績の学校は少人数指導のとりくみが進んでいる」こともわかっています。少人数指導の効果は非常に大きく、このような教育条件整備こそ市長の権限でやるべきことです。

 そもそも全国学テは、子どもたちの学力や学習状況を把握するための「行政調査」であり、学力の一側面しか測れないものです。これまでに「行政調査」を教職員の給与や学校予算等に利用した国・自治体では、どれもが破綻しています。

 イギリスでは、ナショナルテストの結果を1990年代に学校別に公表し、それが子ども・教員・学校を競争にさらし、テストのボイコットやカンニングの増加、管理職のなり手がおらず、管理職不在の学校が多数生まれました。また学校選択制により在校生が減り、廃校に追い込まれる学校も出てきました。アメリカ・テキサス州では、事前にテスト問題を解かせ、点数の悪い児童・生徒を当日のテストから除外したり、テストの際には、間違った回答をしている児童・生徒に指さしで指示をしたりすることが起こりました。これと同様のことが2007年に東京都足立区でも起こっています。この件に関して後の調査で、教職員のみならず、校長、教委、教育長までが加担していたことが明らかになりました。これらは、テスト結果を利用し、教職員への管理と統制を強めたことが引き起こしたものです。このように、今回市長が表明した施策は破綻済みです。また、同時に提案されている大阪市教委の4ブロック化は、学校現場への管理統制を強めるものであること、8つ程度の中高一貫校の創設は、義務教育段階からの学校教育の複線化、一部「エリート」の選別をねらうものであり、合わせて断じて許すことはできません。

 上記の趣旨により、以下のことを強く要求します。

○全国学力・学習状況調査結果を、教員の勤勉手当、学校予算に反映することをやめ、少人数学級の拡充など教育条件の整備をすすめること

以上

2018年 月 日

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